2021年9月から12月にかけて『Hacking Growth グロースハック完全読本』の輪読会を行った。
『Hacking Growth グロースハック完全読本』を読む会の第2回目。今日からいよいよ第1章に入る。第1章は「グロースチームを結成する」だ。
グロースチームに必要な役割として以下が挙げられている。スクラムチームと同様に機能横断型チームであることがグロースチームには求められる。
チームの規模によって1人が複数の役割を兼任したり、複数の人が1つの役割を担当したりする。
チームのマネジメントはグロースリードが行う。
グロースリードはマネジャー、プロダクトオーナー(プロダクトの最終決定権と責任を持つ役割)、データサイエンティストをあわせたような役割を担う。
本書ではプロダクトマネージャーを
一般的には、プロダクトマネジャーはプロダクトのさまざまな要素を形にする過程を監督する。
と説明している。グロースサイクルでプロダクトの新機能を実験として選定した場合に、グロースリードはメンバの中のプロダクトマネージャーを実験のオーナとして任命すると後の章である。
ここで言うプロダクトマネージャーはグロースチーム内での機能開発をマネジメントするのか、それとも別チームを率いているプロダクトマネージャーで、そちらで実験のための機能開発をマネジメントするのか。組織体系の節にあるチームだと前者なのかな。
このあたりは企業によって組織構造や役割名の定義が違うので、そういった典型的な型があるよねぐらいで読んだ方が良いだろう。
詳しくは4章。
「専門分野に応じた業務を担う」とありメンバの専門性に頼っているイメージ。スクラムのように銃士の姿勢まではここでは求めていないようだ。銃士の姿勢であることに越したことはない。
分析とプロダクト開発とマーケティングができる機能横断型のグロースチームを結成せよ。
『Hacking Growth グロースハック完全読本』を読む会の第3回目。第2章は「プロダクトの渇望度を測る」。コアバリューが確立してからグロースハックすべきで、コアバリューの発見/確率までの方法が本章で解説されている。
前回の輪読会までと同じく章を前半・後半に担当分けしたんだけれど、今回は前半だけで時間を使い切ってしまった。第2章後半は次回に繰り越し。
『Hacking Growth グロースハック完全読本』を読む会の第4回目。前回 第2章の前半で時間を使い切ってしまったので今回は第2章の後半だ。以下2回分のまとめ。
第2章は「プロダクトの渇望度を測る」。
グロースするには大前提として顧客に愛されるプロダクトでなくてはならない。価値あるプロダクトであり、顧客がその価値を感じた瞬間「アハ体験(本書ではアハ・モーメントとも)」に愛が生まれる。
プロダクトのコアバリューとユーザーのアハ体験を見つけるのは容易ではないが、プロダクトが「マストハブ」であると思われているかどうかは、著者であるショーン・エリスが開発したユーザーアンケート「マストハブ・サーベイ」と顧客維持率測定によって判別できるという。
プロダクトのコアバリューとアハ体験が発見できておりマストハブなプロダクトであれば、グロース実験へ進むことができる。
そうでなければ追加のユーザー調査(顧客インタビュー・実施調査・試作品・文言変更実験・プロダクト変更実験・ユーザーデータ分析)を通して、まずプロダクトのコアバリューとアハ体験を探すことになる。
プロダクトのコアバリューが無いままにバイラル性を作り込んで一時的にグロースすることができても結果失速してしまうであろう。
『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』でも良いプロダクトでなければプロモーションを工夫しても限界があると述べられている。
ただし SNS ではそう単純な話ではない。
プラットフォームの利用者がコアバリューであるソーシャルネットワークサービスなどは例外
と括弧書きで小さく書かれているのを見落とさなかった。 そうそう、 SNS にとっては多くのユーザーがいる事自体が大きな価値なんだよね。
すでにプロダクトがあり顧客があるならば、プロダクトのコアバリューとアハ体験を発見するためにプロダクト上で実験したりユーザデータ分析したりできる。
ユーザーデータ分析については「顧客体験のあらゆる側面からデータを集めて細かく分析」するために「適切な追跡機能を付加」し「ユーザー行動の緻密な全体像に仕上げ」て、ロイヤルユーザーに特徴的な行動を見つけるとある。分析を通じた予想外の発見のためにもデータ収集と実験が必要だという。
プロダクトが小さい初期段階ではデータ収集処理を網羅的に仕込んでいきやすそうだが、有限の資金と時間の中で進めていかなければならないだろうから、ほとんどの場合取捨選択が必要だろう。
「予想外の発見」とは結果である。予想できないからと闇雲にデータを集め眺めていてはいくら時間があっても足りない。やはり仮説思考で進めるべきだ。
『Hacking Growth グロースハック完全読本』を読む会の第5回目。今日は「第3章 成長のレバーをつかむ」。「分析まひ症候群」節までの前半を発表担当した。
「成長を促す主要因を見つけ、それを変数としたグロース方程式を決める」「その変数の中で最終目標となる成功指標を選び North Star Metric とする」というのがメイントピック。グロース方程式は KPI ツリーのようなものだ。
North Star Metric は「顧客にとって」のコアバリューを正確に表す指標を選ぶ。事業目標として売上・収益を最上位において考える機会が多いが、グロースハックでは顧客をより強く意識して考えるべきだという点についてあらためて今回学んだ。
読む会のメンバから「KGI って日本でしか使われていないんでしょうか」と言われたので Web 検索で調べてみたところ、たしかに日本以外では使われていなさそうだった。目標 (objectives) なのでわざわざ KGI という用語を使う必要なんてないのかもしれない。
グロース方程式と North Star Metric は顧客行動データを収集し定性調査と合わせて分析し定めるべきで、そのためにはデータ計測し集約する仕組みが必要だ。
誰もが分かる形でデータを共有すると、北極星をはじめとした重要指標こそ全社共通の優先事項であるという意識を定着させ、グロースチームだけでなくすべてのチームにデータ駆動型の行動を促すことにつながる。
というのはエンパワーメントの実現にもつながる話だな。
それから「レバー (levers)」っていう表現、握ってガッコンって下げるイメージを持っていたのだけれど、読む会参加者の1人が自分はテコをイメージしていると言っていてなるほどと思った。こういったこと気づきが得られるのは輪読会ならではだな。
『Hacking Growth グロースハック完全読本』を読む会の第6回目。今日は「第4章 高速で実験を繰り返す」。
いよいよ今回はグロースハックプロセスのまわし方の章である。
1〜2週間をタイムボックスとしてイテレーションするプロセスは、スクラムなどのアジャイルソフトウェア開発プロセスに通じるものがある。グロースハックでもタイムボックスは1週間が良いようである。
初期のスタートアップ企業では、週に1〜2の実験から始めて徐々に数を増やしていくのがよい。
とあり早い段階から高速な実験サイクルが期待されている。
多くの実験を行うためには多くのアイデアが必要だが、週1回のグロースミーティングはアイデア出しの場としては使ってはいけないそう。たしかに「創造的なアイデア出し」と「高速な実験サイクル」とは切り離した方がうまくいくのかもしれない。
チームメンバは「みずからの専門知識に基づいてアイデアを出すよう求められる」。ここでもメンバの専門性を重視しているように感じた。このあたりスクラムより分業感が漂っている。優先順位付けのためのアイデアのスコア付けも提案者自身だ。
実験の結果に迷った場合は従来のバージョンを維持するのが最善の道だという。時間と労力をかけた実験は、実験を続けることで良い結果が出てくるのではと思いたくなる。きちんと元に戻す判断ができるようにしておきたい。
『Hacking Growth グロースハック完全読本』を読む会の第7回目。今日は「第5章 獲得をハックする」。
アクイジション (Acquisition) とリファラル (Referral) についての章。
グロースハックでは「刺さるメッセージ」も実験によって作り出す。ソーシャルリスニングやサーベイ・CS 部門へのヒアリングから顧客の響く可能性の高い単語や言い回しを抽出し、効果が高いメッセージを実験によって発見する。発見したメッセージによってはブランディングだけでなくプロダクト自体まで変更してしまう。
「こういう社会課題をこのように解決したい」という信念と情熱をメッセージとして伝えていこうというのは全くない。実験で良かったものを採用していくといったところに軽さを感じた。まあ考え抜いたってそれが受けいられるメッセージかどうかは別の話といえばそうなんだけれども。
チャネル候補について「コスト・ターゲット・コントロール・インプット時間・アウトプット時間・スケール」6要素それぞれにスコアをつけ、相加平均をとる方法が紹介されていた。前の章でもスコアをつけて相加平均をとるのがあった。本書、点数をつけて平均をとるのが好きだな。
本章ではチャネルを整理するため「バイラル/口コミ」(viral / word of mouth)「オーガニック(自然流入)」 (organic)「ペイド(有料施策)」(paid)という3分類を紹介している。輪読会ではペイド以外も費用がかかるのでどうもすっきりしないというような疑問の声があった。
バイラル性を「口コミ」と「インストルメンテッド・バイラリティ」の2つに区別する。プロダクトの機能として組み込んだバイラル性が効果を上げたようにみえて、実は口コミ方が成長の主要因だった例もあるよとのこと。
『Hacking Growth グロースハック完全読本』を読む会の第8回目。今日は「第6章 活性化をハックする」。
アクティベーション (Activation) についての章。前半の発表を担当した。
まずアハ体験(顧客がプロダクトの価値を感じる瞬間、本書ではアハ・モーメント)までの顧客の行動とコンバージョン率を把握する。
コンバージョン率を高める方法としては
があるのだが、ほとんどのグロースチームは後者に注力しているという。欲求を高めるのはグロースチームとは別のプロダクトチームが担うのが効率的なのかもしれない。
新規顧客体験の最適化の話では、影響力の6つの原理・フロー状態・ゲーミフィケーション・フォッグ行動モデルといった心理に関する話が登場した。アクティベーションの改善には心理学の治験をいかしつつ実験するのが効率的そうだ。
新規顧客に対してアンケートを取ると回答している間に顧客のコミットメントが高まるという話には、そういう人の動かし方があるのかと感心した。ただ行動過程を削ればいいというものではないのだなあ。
『Hacking Growth グロースハック完全読本』を読む会の第9回目。今日は「第7章 維持をハックする」。
リテンション (Activation) についての章。 RARRA に従ってまずリテンションの改善を検討するにあたり先に一度読んでいる章で、輪読会にあたり再読した。
初期ステージはアクティベーション改善の延長として、何回か利用し価値を体験することでプロダクトを好きになって継続利用してもらえるようする。
中期ステージではプロダクトの利用を習慣化させる。ここでフックモデルが登場する。
価値向上を予告するセクションでは「新機能の予告が持つ顧客維持効果」が説明されていた。確かに今後もプロダクトが改善されていく期待が持てるなら利用し続けようと思うものなあ。
長期ステージでは、主に最適化をしたり、適切な頻度での新機能提供などで新しい体験と価値の発見をしてもらう。
休眠顧客の再獲得(レザレクション)もこの章で合わせて説明されている。休眠理由を調査した上で、休眠理由に合わせた内容でメールやプッシュ通知・リターゲティング広告などを使いアプローチする。
新規顧客の顧客維持率の計測と分析は分かりやすいんだけれど、中長期継続顧客や再獲得顧客の継続維持率の方はちょっと分かりづらい。こちらもコホートで分けていくべきなのだろうけれど、数が多くなってくると見通しが悪くなってくるなと。
『Hacking Growth グロースハック完全読本』を読む会の第10回目。今日は「第8章 収益化をハックする」。前半部分の発表を担当。
収益化のグロースハックも基本は分析・ユーザー調査と実験。前半部分は収益化の観点でのおさらいである。
後半は価格の最適化や消費者心理の利用がトピック。価格の最適化についてはグロースハックというテクニカルな話以前にマーケティング戦略としてきちんと考えいく必要がある。消費者心理についてはちょうど今読んでいる『影響力の武器』に出てくる影響力の6つの原理が紹介されていた。収益化のハックにおいては、マーケティングやセールスで長年研究されてきた考えなどをしっかり学んでおく必要があるな。
『Hacking Growth グロースハック完全読本』を読む会もいよいよ次回が最終回の予定だ。参加者の一人が「自分のための勉強会だと思ってるんで」と言っていて、めちゃいい姿勢だなとテンションが高まった。「いやいや、自分も自分のための勉強会だと思ってるから」と負けじと返した。
『Hacking Growth グロースハック完全読本』を読む会の第11回目。今日は最後の章「第9章 成長の好循環」。
9月8日にキックオフミーティングをしてから3カ月かけて読み進め本日最終回を迎えた。
本書を読んだことで各種サービスに触れている時にこれはグロースの仕掛けだなといろいろ気付くようになったという輪読会後の感想を聞いて、たしかにそれあるなと自分も思った。
データ分析を重視していると同時に、アンケートなどによる定性的なユーザー調査の必要性をいろいろな章で説いていたのが印象に残っている。ユーザー調査をいとわないようにしていかねば。
グロースハックの方法論が幅広くまとめられた本なだけあって内容は盛りだくさんだった。全部を満たさなければと思って取り組むと、なかなか先に進まずにグロースさせるべき時期を逸してしまいプロダクトにとって手遅れな状況になってしまうかもしれない。不完全な状態でも答えを出して走りだすようにしたい。
同じゴールを目指しているメンバで絶対的な正解のないグロースハックという手法について1冊の本を通じて話し合いながら読み進めたの良い学びになった。チームで使う共通の言語も持てたのではないだろうか。今後に大いに役立つこと間違いなし。
9章で個人的にポイントだと感じたのはまずは以下の話。
グロース施策をいつも管理業務より優先するのだ。
常に人手不足になる事業活動の中で、専任してもらえる体制にしていくのが今の自分がやるべきことだなと。
実験をしていくにあたり
新たな成長のレバーを探す前に、すでに効果を上げているチャネルや戦術の新たな活用法を探すべきだ。 (中略) 「命中」した方策を徹底的に活用するのがよい。
との指針も参考になった。満遍なく改善していくべきか、集中して改善していくべきか迷った時に思い出そう。
[ 読書ノート ]
Naney (なにい)です。株式会社ミクシィで SNS 事業の部長をしています。
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