リハビリテーションの専門職である作業療法士が著者の本。脳と体の仕組みに基づいた日々の行動をちょっと良くする方法が詰まった良書。「すぐやる」ようにするがテーマの本だが、それ以外にも様々な行動改善のエッセンスが詰まっていて参考になる。
ちなみにここでいう「すぐやる」は依頼があったらすぐ対応するといったことではなく「先送りしない」というニュアンスと理解している。
で、特にこれは応用してみたいなと思ったのは以下。
脳に余計な情報を入れないようにすることで「ついやってしまう」を止めるという話。意識を変えるのではなくそういう環境になるように行動を変えようというのがポイント。
脳が「次の行動」を予測できるところまで「前の行動」をし、「新しい作業の区切り」を脳に植え付けることで行動に移しやすくなるという話。ちょっと手をつけておいてみるというもの。
他人を真似るように脳ができているので、優秀な人(本書のテーマではすぐにやる人)が視界に入るようにするという提案。横並びになる・共同作業するのがより効果的。優秀ではない人(すぐやらない人)が目に入らないようにする。
今の状況をどのように感じているかを表す「経験的な言葉」を普段から発することで脳がその気になるという話。
自分が体験したことを「感じたことや体の様子」を付け加えて雑談しておくことが大切だそう。相手の話の良し悪しをいちいち判断しがちな人はそれを止めることで自分が使ってこなかった「経験的な言葉」を学ぶ機会が得られるとのことだ。
個人的日誌で「事実・感情・発見」を書くというのに関連しているなと思った。このあたりの脳の動きについてもっと深く知りたい。
こうして自分がまずやりたいポイントだけメモとしてピックアップしてみるとどこかで聞いたことがあるのが多いなという感じになっちゃたけれど、本書内では脳の働きについてや事例などを交えて説明されているので読むことでなるほどと感じてやってみようと思えてくると思う。
「つい先送りしてしまう、やりたいことがあるのについ違うことをしてしまう」を改善したい人にお薦めの1冊。
[ 読書ノート ]
人事評価における等級と評価基準について学びたくて『人事の超プロが明かす評価基準』という本を読んでみた。
著者が長年人事関連の仕事をしてきた経験によると「会社が社員に求めていることはどんな会社でもほとんど同じ」だそう。本書で紹介している「45のコンピテンシー」では「新人・一人前・チーフ・課長・部長・役員」という職位クラスで求められるコンピテンシーを示しているのだけれど、なるほど自社の等級制度もかなり近そうだ。
評価する上での参考にと読んでみたけれど、評価される立場としてどう自己成長していくべきかを確認していくのにも良い本だった。
本書では45のコンピテンシーについて「OK な行動」「NG な行動」「チェックポイント」「推奨行動」が説明されているので、コンピテンシーを満たすスキルを持ち行動できているのかをより具体的に確認できる。それをもとに評価したり成長を促したりしていくのに活用できそうだ。
まず「評価される人」=「影響力のある人」という点が重要。
評価される側という視点では「会社が社員に求めている普遍的な評価基準」を理解しスキルを伸ばしながら求められる行動を取っていけばきちんと評価されるわけである。
コンピテンシーに対する自己評価について漠然とふりかえって作文しがちだけれど、現在や次の等級・職位に求められるコンピテンシーを本書を参考に理解すればより客観的に書いたりアピールできそうだ。
自分の評価に不満がある人、人事評価の低い人の特徴として、上司と話し合うことが苦手で、上司を避ける傾向が見られます。
というのはきちんと向き合いたい指摘である。
部長・役員クラスを目指さない人はどうすればいいのか、スペシャリストになりたい人はどうすれば良いのか。キャリア・ポジションについて「オペレーター(新人・一人前クラス)」「オペレーションマネージャー(チーフ・課長クラス)」「スペシャリスト」「コア(部長・役員クラス)」という選択肢があるとしている。年収重視なのか時間・自由重視なのか。等級テーブルを上がっていくこと・引き上げていくが唯一の正解ではないということをあらためて考えられた。
ここではスペシャリストもコアと同様に45のコンピテンシーすべてを獲得していることが求められるている。コアが組織成果の最大化に向かっていくのに対し、スペシャリストは専門領域について高い能力をもち社内外に影響力を与えることで個人成果の最大化をしていく。こんなイメージだ。
会社の規模や自身の職位にかかわらず、会社で働く人は読んでおきたい1冊だ。
[ 読書ノート ]
「天気の子」展を観に行く前にこの土日で『小説 天気の子』を読み切った(1カ月以上前に買っていたのだ)。
新海誠監督自身が執筆した小説で、かつアレンジ無く映画と同じ内容(あとがきでそう書かれている)なので「なんか違う」といったことが一切無いのが嬉しい。
また映画では直接言葉で表現されていない心理描写も小説では書き下されていて、しっかりうかがい知ることができて楽しい。細かいところで「そうだったのか」と理解が深まり満足度高かった。
読み始めは、読み慣れない癖のある文体に感じられたけれど、それも途中から慣れて気にならなくなった。
あと p.112 に mixi が出てきてちょっと嬉しくなった。
ずっと一緒にやってる趣味友がいてね、それこそmixiの時代から。
[ 読書ノート ]
会計の話をするのに貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書についての基本的な関係をまず理解しておかねばということで「ストーリーでわかる財務3表超入門」を昨日・今日で読んだ。
株式会社を起こし資金を調達し、お金を借り、材料を仕入れ、商品を売る。ビジネスの流れとそこで発生する取引が財務3表にどう反映されていくかという形で説明されていくので非常に理解しやすい。
「試算表を2つに分けると貸借対照表と損益計算書になる」
というのを恥ずかしながら本書で初めて知り、そしてそれで多くのことが理解できるようになった。そして「これは貸借対照表の左? 右?」なんていつも迷っていたことが本書を読むことですっきりした。その場しのぎで「この勘定科目は借方はコレで貸方はコレ」みたいなのを都度調べて小難しいなあと思っていたけれど、基本が理解できれば怖くないという感じ。
先週ミーティングで「(オウンドメディア再設計にあたり)9セグマップ(での顧客分類)を参考に考えている」と言われた。西口一希氏が確立した顧客分析フレームワーク「顧客ピラミッド(5セグマップ)」と「9セグマップ」について氏の著書に詳しく書かれているようなのでさっそく読んだ。
本書では顧客セグメントごとの1人の顧客の意見を聞き分析し(「N1分析」)、それを起点に商品/サービスの「プロダクトアイデア」を発見し形にしたうえで「コミュニケーションアイデア」をもってプロモーションしていくというマーケティング方法を説明している。
流れについてはざっくり
と理解。
この「顧客起点マーケティング」でマーケットの顧客セグメント分類に使うのが「顧客ピラミッド」「9セグマップ」だ。シンプルなアンケート調査で顧客セグメント分類する方法が紹介されている。アンケートで必要な設問も挙げられていて参考にできるので顧客分析時にとても助かりそう。
氏は「プロダクトアイデア」を重要視している。結局良いプロダクトでなければ、いくらプロモーションを工夫しても限界がある。この当然なところをつい忘れ、独立した活動として「プロモーションの力でユーザー獲得しよう」と取り組みがちなので気を付けたい。
マーケティングの話は化粧品やシャンプーなど消耗品の購買視点が多い。本書はスマートニュースを事例に「ネットサービス」におけるロイヤル顧客(ロイヤルカスタマー)や離反顧客についての分析とマーケティングの取り組みが詳しく書かれておりとても参考になった。
ネットサービスのマーケティングやプロダクトマネジメントに関わるにあたり読んで良かった1冊だ。
※「回答数(=N数)」と記述しているところがあるので本書では母集団の大きさではなくサンプルサイズ n のことを N と表現しているようだ。
[ 読書ノート ] [ カスタマーロイヤルティ ] [ 事業成長 ]
2018年に読んだ『Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール』(原題 Hooked: How to Build Habit-Forming Products)の読書ノートを書いていなかったのでハイライトしたところをざっと読み直した。
人は意識的な思考をほとんど伴わずに状況的なきっかけによって自動的に行動をとるようになることがある。プロダクトがそのような習慣性を作り上げることがあれば、ユーザーに継続的に利用してもらえる。さらに習慣化されたプロダクトは価値のあるものだと判断しより依存度が高まっていくのだ。
4つのステップを踏むことで人間の行動を習慣付けさせるのが本書の提唱する「フックモデル(The Hook Model)」だ。*1
がその4つのステップである。
本書を初めて読んだ時「インベストメント(投資)」がステップに含まれていることに驚き、そして経験的に非常になるほどと思ったのだ。自分は Tweet を見やすくするよう Twitter 上で日々リストを見直している。フックモデルではこれが「ユーザー自身が自分の体験を良くするための行動(インベストメント)」だというのだ。なるほど、習慣的に使っているプロダクトには実際にいろいろ投資しているなと驚いた。
本書では各ステップについてそれぞれ章を割いて、それぞれ「どのようなタイプのものがあるのか」「どのような心理的な背景があるのか」「どのような事例があるのか」を通して説明されている。
特にネットサービスの継続(Retention)を高めていきたいと考えているプロダクトマネージャーにとって読んで損の無い1冊だ。
[ 読書ノート ]
サービスのグロースに関するキーワードに AARRR と ARRRA がある。後者について本書で説明されているとのことで読んでみた。
スタとアップメトリクス AARRR を株式会社VASILY(2018年4月の合併で株式会社スタートトゥデイテクノロジーズに)の実践の中で発展させたモデルだそうで、施策の順番とユーザー体験の最大化にポイントが置いている。ARRRA モデルでは以下のステージについて順に取り組んでいくことを提唱している。
取り組む順番に並べられているので AARRR よりも実践しやすいモデルだ。
本書自体も理論ではなく実践の説明や事例紹介に重点が置かれている。手順やツール・分析方法など広く網羅されておりまさに「教本」だ。
「グロースハック」という言葉が出てきたのが2012年前後(本書イントロダクションより)。よく耳にしていたのは2013年〜2014年頃。そして本書が出版されたのが2016年1月21日。他のスタートアップのフレームワーク(リーンアナリティクス・グロースピラミッド・顧客開発)と比較しても基本的な流れは同じだそうだ。「グロースハック」というワードの流行り廃りはあるかもしれないが、サービスを成長させるための考え方は普遍。平易にわかりやすく書かれている本書はこれからも良いガイドになりそうだ。
ちなみに著者の1人金山裕樹氏は『Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール』(2014年5月22日)の訳者でもあり、リテンション獲得に最も有効なフレームワークの1つとしてフックモデルを本書でも簡単に紹介していた。フックモデルの位置付けの再確認にもなってすっきり。
海外では AARRR に対してリテンションを重視した RARRA モデル (Retention・Activation・Referral・Revenue・Acquisition) が2017年頃から提唱されているようだ。
『響け! ユーフォニアム 2 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏』残り3分の1を今日一気に読み終えた。めちゃ熱かった!
9月に読み終えた第1巻の『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』続編で、テレビシリーズ第2期『響け!ユーフォニアム2』の第五回までにあたる。13話でアニメ化された第1巻に比べると、第2巻の方がじっくりと進むように感じられ、アニメ版以上にじっくりと登場人物の心理とその背景を読み取ることができ「なるほどそうだったのか」と何度もなった。
「原作を読んでからアニメ化された作品を観る」か「アニメ化された作品を観てから原作を読む」か。本シリーズはアニメーションのシーンを思い浮かべながら原作を読むのが楽しく感じられるタイプなんじゃないかと思っている。
[ 読書ノート ]
筋トレが長続きしない。「強い意志をもって続け健康になろう」という精神力頼りでこれ以上失敗体験を増やすのはだめだ。「毎日歯を磨かないと気持ち悪い」と同じになるよう、習慣にすることだけにまずフォーカスした方がいい。以前同僚に『小さな習慣 (Mini Habits: Smaller Habits, Bigger Results))』 という本を教えてもらったことを思い出したので読んでみたところ、シンプルでいけそうな習慣化ハックが紹介されていた。
本書では新たな習慣にしたいと思っている行動をもっとも小さい形にしたものを「小さな習慣」と呼んでいる。例えば「腕立て伏せ1回」のようなものだ。
習慣化するには行動の繰り返しと報酬が必要だ。習慣になるまではモチベーションか意志の力を使って行動することになる。
モチベーションは心理状態やエネルギーによって上下しやすく習慣化のためには信頼できないので、意志の力で実行するようにした方が良い。
「小さな習慣」であれば忙しくて時間がない日や疲れている日でもほんのわずかな意志の力で実行できる。常に目標を達成できていることが励みにもなり、毎日続けるうちに習慣として定着するのだ。
行動開始の合図は決まった時刻(時間ベース)やなにかの行動の後(行動ベース)などが一般的。
本書では「小さな習慣」で行動開始の合図を決めずに(行動開始の合図を複数とし)就寝時間までにやるというフリースタイルも選択肢として提案している。特に生活の一部にしたい習慣は特定の開始合図を設けない方が良いのだという。
毎日「腕立て伏せ1回」で意味があるのか?
行動を起こしてしまえば、ほとんどいつも「おまけ」でもっと多くをこなしてしまうよというのが本書の主張である。「行動するとやる気がおきる」とよく言われているので頷ける。また「小さな習慣」が本当の習慣の定着につながっていくので、早く習慣化される「小さな習慣」をすることに意味があるという。
なお、小さな目標以上を達成すると無意識が新たな期待値を設定してしまうことから大きな目標に変えてしまいがちだが、これは意識的に拒む必要がある。
疑問に感じたことについては以下のように書かれていた。
すぐに始められて毎日継続できているので気に入っている。習慣化についてはまず「小さな習慣」にするだな。
[ 読書ノート ]
Naney (なにい)です。株式会社ミクシィで SNS 事業の部長をしています。
nDiki は1999年1月に始めたコンピュータ日誌を前身とする Naney の Web 日記(兼パーソナルナレッジベース)です。
#nNote タグがついている記事は他の記事に比べて、より断片的・未整理・不完全なちょっとしたノートです。まだ結論に至っていない考えなども含まれます。頻繁/大幅に更新したり削除したりすることがあります。
ナレッジベースアプリケーション Obsidian で書いているノートの一部を notes.naney.org で 公開しています。
※内容は個人的見解であり所属組織とは関係ありません。