nDiki : PAR::Repository

2006年12月12日 (火)

PAR::Repositoryビルド済み Perl モジュールをネットワーク配信

実行可能ファイル作成としての PAR

PAR といえば Perl スクリプトを実行可能ファイル(Windows なら EXE 形式ファイル)に変換するモジュールとして有名である。

ちなみに実行可能ファイルを作成する部分はは PAR 0.97 より PAR-Packer パッケージに分けられ、PAR 自体はインストールしやすい pure Perl なパッケージになっている。

PAR モジュールアーカイブからのローダとしての PAR

PAR が提供するもう一つの(こちらが本来はメイン?)機能は、プログラムの実行時に必要な Perl モジュールPAR ファイルと呼ばれる Perl モジュールアーカイブファイルからロードする機能である。 XS モジュールなどもコンパイルすることができるどこかの環境で1度ビルドして PAR ファイルにしておけば、同じアーキテクチャのホスト上でそのまま利用することができる。

PAR リポジトリ

ロードしたい PAR ファイルはファイルパスだけではなく URL でも指定することができ、必要な時にオンデマンドでフェッチさせることができる。 これを使えば Perl プログラムの集中管理可能だ。

PAR 0.951 からは PAR リポジトリというコンセプトが追加され、パッケージ毎に作った PAR ファイルをサーバ上(あるいはローカル)のリポジトリに蓄積してオンデマンドでロードできるようになった。

個別に PAR ファイルを指定する従来の方式に比べてかなり便利そうである。 ということで試用してみた。

まずは

あたりをインストールし準備 OK。

1. PAR リポジトリを作成する

最初に PAR-Repository に含まれている parrepo で。

 parrepo create -r /tmp/PAR

PAR リポジトリファイルの中にはデータベースファイルが作成されるが、これは DBM::Deep というアーキテクチャ非依存のものを使っているので、Linux でも Windows でもどちらからでもアクセス可能である (つまり Linux 上でリポジトリをメンテできるということだ)。

2. Perl パッケージを PAR ファイル化する

次に必要な PAR ファイルを作成する。 作成したいパッケージを展開してビルドし、blib ができている状態で PAR::Dist を使ってパッケージ化する。

 perl Makefile.PL
 make
 make test
 perl -MPAR::Dist -e blib_to_par

例えば ActivePerl*1 上で WWW-Mechanize-1.20 を PAR ファイル化すると

 WWW-Mechanize-1.20-MSWin32-x86-multi-thread-5.8.8.par

というファイルが作成される。

普段から ActivePerl で必要なライブラリは基本的に自前で PPM パッケージ化して、動作確認した上で PPM リポジトリに蓄積するようにしているので、合わせて次の手順でパッケージを作ることになる。

 perl Makefile.PL
 nmake
 nmake test
 perl -MPAR::Dist -e blib_to_par
 make_ppm

*1ここでは Windows 上の

3. PAR リポジトリPAR ファイルを登録する

PAR ファイルができたら parrepo でリポジトリに登録する。

 parrepo inject -r /tmp/PAR -f xxx.par

4. PAR リポジトリ上のライブラリを使用してみる

例えば先ほどの WWW::Mechanize がリポジトリに登録されている状態で

 #!/usr/bin/perl
 use PAR { repository => 'file:///tmp/PAR/' };
 use WWW::Mechanize;
 my $mech = WWW::Mechanize->new;
 $mech->get('http://www.example.com');
 print $mech->content;

というスクリプトを書いて実行すると、PAR リポジトリから WWW::Mechanize がロードされて正しく実行される。

ここでリポジトリを Web サーバアップロードして、repository のところに URL を指定するようにすることもできる。 例えばリポジトリを http://www.example.com/PAR/ に配置したとすると

 #!/usr/bin/perl
 use PAR { repository => 'http://www.example.com/PAR/' };
 use WWW::Mechanize;
 my $mech = WWW::Mechanize->new;
 $mech->get('http://www.example.com');
 print $mech->content;

と書き換えることで、インストールしていない WWW::Mechanize を使用できるようになる。

Perl プログラムを実行形式化する

先ほどの Perl スクリプトを get_top_page.pl という名前で保存して pp で実行可能ファイル化する。

 pp -o get_top_page.exe -M PAR::Repository::Client get_top_page.pl

とすれば get_top_page.exe という実行可能ファイルが作成される。 WWW::Mechanize はオンデマンドで http://www.example.com/PAR/ からフェッチされるので、アップデートが必要な場合は新しい PAR ファイルを作成してリポジトリを更新するだけでよい。 EXE ファイルを作成しなおして利用者に配付しなすといった作業も不要だ。

スクリプトもリポジトリにおく

さらには実行するスクリプトをも PAR リポジトリに置いておくことが可能だ。

例えば WWW-Mechanize に含まれている mech-dump をオンデマンドにフェッチして実行する実行形式ファイルは以下のコマンドで作成できる。

 pp -o mech-dump.exe -M PAR::Repository::Client \
   -e "use PAR { repository => 'http://www.example.com/PAR/', \
                 run => 'mech-dump' }"

まとめ

ActivePerl では PPM があるとはいえ、普通のユーザにちょっとしたプログラムを使ってもらうのに「ActivePerl をインストールして、PPM パッケージをインストールして、……」というのは手間すぎる。

pp で プログラムに必要なものを全てバンドルした実行形式化ファイルにするという方法ももちろんあるのだが、頻繁にアップデートするようなスクリプトの場合には、起動のための部分だけ pp で作成しておいてあとは PAR リポジトリで集中管理するというのもちょっと魅力的である。

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2006年12月15日 (金)

Perl スクリプトを PAR ファイルにして PAR リポジトリに登録する

PAR リポジトリから Perl モジュールをネットワーク配信するためには、以下の手順で PAR ファイルを作成する。

 perl Makefile.PL
 make
 make test
 perl -MPAR::Dist -e blib_to_par

blib ディレクトリ以下のファイルもとに PAR ファイルが作成されるので、でき上がった PAR ファイルを リポジトリに登録すれば良い(PAR::Repository でビルド済み Perl モジュールをネットワーク配信)。

ではちょっとした Perl スクリプトを PAR リポジトリからロードして使えるようにするにはどうすればよいか。もちろん h2xs などで一式そろえ make して blib ツリーを作るようにすればいいが、たった 1 つのスクリプトファイルだけの時などは大袈裟だ。

この場合は pp でいける。

 echo 'print "hello world!"' > myscript.pl
 pp -o myscript.par -p myscript.pl
 parrepo inject -r /tmp/PAR myscript.par -v 1.00 \
   -a MSWin32-x86-multi-thread -p 5.8.8 \
   --any-arch --any-version

スクリプトのメタデータがないので、parrepo に登録する際に明示的にオプションで指定してあげる必要がある。

-v
プログラムのバージョン番号
-a
アーキテクチャ
-p
Perl のバージョン
--any-arch
アーキテクチャ非依存で動くならば指定しておく
--any-version
任意の Perl のバージョンで動くならば指定しておく。

PAR ファイル(にした Perl スクリプト)が --any-arch で --any-version であっても、-a と -p は必須だ (PAR::Repository の中にアーキテクチャ/バージョンつきで登録された上でシンボリックリンクの形で any 扱いにされるため)。

これで PAR リポジトリからスクリプトを実行できるようになる。 スクリプトの更新もリポジトリ側で行うだけで良くなる。

 perl -e "use PAR { repository => 'http://www.example.com/PAR/',
                    run => 'myscript.pl'}"

お好みで実行形式ファイルにしておけば Perl をインストールすることなく実行できるようになるので便利。

 pp -o myscript.exe -M PAR::Repository::Client \
   -e "use PAR { repository => 'http://www.example.com/PAR/',
                 run => 'myscript.pl'}"

ちなみに PAR リポジトリを使わずに、直接 PAR ファイルを指定して実行できることもできる。

 perl -e "use PAR { file => 'http://www.example.com/myscript.par', \
                    run => 'myscript.pl' }

ちょっとした用途ではこちらでも良いけれど、アーキテクチャ別の管理やらモジュールの管理やらを考えると PAR リポジトリを作ってしまった方が楽。

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Naney Naneymx

Naney (なにい) です。株式会社MIXIで SNS 事業の部長をしています。

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