Tarebouzuの読書メモ

このページは、Tarebouzu が読んだ小説の記録ページです。「書評」というようなおこがましいものではなく、小説を読んで感じたこと、思ったことを書きました。言葉によって紡ぎ出される小説の世界に、そして読む人の心の中に多くの感動を与える小説の世界に敬意を表しながら、私なりに感じたことや考えたことを書いていきたいと思います。

「N・P」 吉本ばなな 著  角川文庫

この小説のタイトル、「N・P」は、”ノースポイント”の略。物語に出てくる小説のタイトルである。主人公、風美(かざみ)の恋人の死がさまざまな出会いと出来事を彼女にもたらす。風美がひと夏に体験するさまざまな出来事がこの小説の世界である。夏が始まると同時にさまざまな人との出会いがあり、風美の周りはざわつき始める。そして、夏が終わりに近づくにつれ出会った人たちとの別れがあり、風美の周りに起こった出来事もひと段落する。と、作者でもない私がこんなふうに、この小説の世界を語るのは僭越ではあるが・・・。
私はこの小説が大好きで、最初に読んだのは5年前であるが、その間何度か読み返している。この小説を読んで最初に感じたこでもあり、今も感じることであるが、私はこの作品のいたるところに「さわやかな風」と「青い空」を感じる。作品の舞台となる季節が夏ということもあるのだが、そこかしこに”さわやかに吹く風”や”大きな入道雲でいっぱいの青い空”をイメージしてしまう。私の感じる夏そのもののイメージがこの作品にはあるからだろう。風美は夏が大好きで、「こういうことができるのは夏だけ」という言葉をよく発する。私も一番好きな季節は夏で、夏がくるだけでなんだか気持ちがうれしくなるなのだ。そんな夏に対する期待と憧憬が、主人公の風美と同じだからこの小説に共感できたのかもしれない。
この小説に出てくるのは、風美、二卵性双生児の咲(さき)と乙彦(おとひこ)、そしてこの双子と腹違いの兄弟(姉妹かな)である萃(すい)。風美はこの三人の人生に、夏という短い期間に大きくかかわることになったのだ。
私がまたこの小説を読み返したのは、あと数ヶ月もすればやってくる夏を一足早く感じたかったからかもしれない。随所に出てくる夏の描写にわくわくしながら読んでいった。

「月と六ペンス」 サマセット・モーム作 阿部知二訳

学生の頃から題名と話の概要は知っていた。しかし、なかなか読む機械に恵まれず今日まで来た。今回読もうと思い立ったのは、「タヒチに旅行がしてみたい」と思ったことがきっかけだ。モームがゴーギャンの生涯にインスパイアされて書いた作品で、タヒチが舞台となっているらしい。ただ、この作品、字も細かく1ページに占める文字の量もかなりあり、全部で317ページもあるため、純文学に位置付けらるこの作品を読破できるかちょっと心配だ。でも、あこがれのタヒチに思いを馳せて読んでみよう

「リング」 鈴木 光司 著  角川ミステリー文庫

奇妙な死に方をする若者たちの話から始まるこの小説に、映画版の「リング」貞子の映像が頭をよぎり、読み始めは少し怖かった。しかし、読み進めるうちに、主人公浅川とその友人の高山竜二との”謎解き”にページをめくる手がどんどん早くなっていった。あの7日間であれほどの情報量とそれをもとに謎を解く軽快さに時間も忘れて読みふけってしまった。というか、実際には怖さが先に立つためか、それを拭い去るために謎を主人公とともに解いていかなければならなかったというのが事実だろうか。
日本版とハリウッド版の「リング」の両方を観たが、どちらも小説でのリズミカルな謎解きが感じられず、貞子(サマラ)の呪いの怖さが前面に出ていた。
貞子の叶えれぬ思いがもとで、それが怨念となり、あのような奇怪な事件を引き起こした。叶えれぬ思いとは、自分の分身を作ること、すなわち新しい生命を産み出すことなのだろうと私は(勝手に)解釈した。
原作を読むと貞子の呪いの怖さよりも、何かを生み出すという生命に関わ部分にまで及ぶようなテーマがこの小説にはあると思った。それゆえ、作者の鈴木氏はホラーというか、人を恐怖におののかせるためにこの小説を書いたのではないと感じた。

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